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ラブライブSS「わたしのたったひとつののぞみ」

 生きる希望こと「RADIOアニメロミックス ラブライブ!~のぞえりRadio Garden~」が91回にて最終回を迎えました。それを薄い本のイベントへ行くときに高速バスの中で聞いてたら、自分が「School idol Fictionally」というラブライブの合同誌に参加したときのSSのことを思い出しました。
 本を持っていない方でも、告知記事や特設サイトをご覧頂いた方はわかると思いますがのぞえりのSSです。
 作中には「水圧で空を飛ぶ奴」「約束ノート」などこのラジオから頂いたアイディアをもらっています。そのため僕の中では切っても切れない大切なものです。
 そのためイベントから帰ったら許可とって公開しょうかなとつぶやいたら「\いいよ/(原文ママ)」と5分ほどで主催さんから連絡を頂いたため、我らのナンジョルノとくっすんのラジオガーデン卒業を祝い公開いたします。
 ただ公開するだけじゃなく、雨竜が聖地巡礼+取材をしたときの写真を加え、最後の方にはあとがき代わりに簡単な解説を追記しました。

 読みづらいって方はpixivにもうpしましたのでそちらへどうぞ。http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5859663


 小さい時に『貴婦人と一角獣』という絵を見たことがある。フランスで描かれた六枚のタペストリーで、人間の六感を示したものだと言われている。
 その最後の一枚、日本語で『わたしのたったひとつののぞみ』と訳される絵は謎が多く、今でも複数の説がある。
 どこでどうして見たのかよく覚えてないけど、この一枚の不思議な感覚だけは今でもずっと頭のなかに残っている。わたしの不思議な感覚、自分で『スピリチュアル』なんていちゃってるこの感覚はもしかしたらこの時にこの絵からもらったのかもしれない。
 わたしのたったひとつののぞみ。
 大好きなあなた、大好きなみんな、大好きな音楽、楽しい日々、わたしの居場所、みんなわたしが望んだことだった。
 人間、欲張りやなぁって思う。一つの望みが叶ったら次の望みが生まれる。またはその望みを維持し続けたいと思う。こんなこと叶わないって分かっていてもそう思ってしまう。
 わたしはこの時間が永遠に続けばいいと思った。わたしの望んでいるこの時間、いやすべての時間は有限だ。生き物は生まれれば死ぬし、街は日々姿形を変え、花は咲いては散る。形あるものはいつか壊れる。永遠なんて言葉でしか存在しない。
 でもその叶わないと思ってた望みが今叶ってしまってる。
 日々は繰り返され、わたしたちは出会いを何度も繰り返した。別れの日が来ないので出会いだけが繰り返される。
 そして、何度でも何度でもあなたに恋する。あなたと居られるのがわたしの幸せ。
 わたしののぞみはずっとあの人と一緒にいることだった。


 次の学園祭のライブでやる新曲『No brand girls』はオーイェイ、という元気な掛け声が特徴らしい。真姫ちゃんが作った仮歌を聞いたみんなは、その勢いのあるところが気に入ったらしく好評のコメントを好き放題言う。
 二回位前だったかかな? その時も真姫ちゃんと海未ちゃんはこの曲を作った。前回は『Wonderful Rush』という曲でリズムのいい掛け声があったので、学園祭の曲は勢いとか元気とかそういうのがテーマなのかもしれない。
 前回、前の学園生活でもこうしてみんな楽しそうに話してて、海未ちゃんはことりちゃんや穂乃果ちゃんに歌詞を褒められて恥ずかしそうにしてて、真姫ちゃんは凛ちゃんや花陽ちゃんに褒められて『当然でしょ』と意地を張る。わたし――うちはこうしてみんなを見て笑う。何度見てもみんなが楽しそうにしているのを見ても飽きないけど、
「希? どうしたの?」
 うちに声をかけたのはエリちだった。いつもどおり凛々しくてきれいな声なんやけど、まるで病人を心配するような声をかけてきたのでちょっと驚く。
「エリちこそどうしたん?」
 うちはいつものように似非関西弁――と言ってもいろんな方言を混ぜてるので関西弁ですらないもの――で答える。
「いえ、希がなんかうかない顔してたから、体調でも悪いのかなって」
「そんなことないで、エリちは心配性やなぁ」
 そんなところが好きやけど、と口には出さず付け加えてみる。
「そうなのですか希?」
「変なものでも食べたのかにゃ?」
「そんな凛じゃあるまいし」
「真姫ちゃん、凛ちゃんもさすがに拾い食いなんかはしないよ……」
「保健室行くならことりが付き添うよ」
「えっ、どうしたのどうしたの?」
「ちょっと、にこも混ぜなさい!」
 最初に海未ちゃんの耳に入ってからもうみんな一斉に心配してくれる。すごい大切にされてるなぁって感じて嬉しいんだけど、
「ホントなんでもないで……みんなも心配性すぎ~」
 ホントに大丈夫なんやけどなぁ。エリちにはどう見えたんやら。
「そうですか。これから練習ですが、きつかったら途中でも言ってくださいね」
「ホントに大丈夫やって。でもありがとな」
 海未ちゃんの言葉に素直にお礼を言う。海未ちゃんはどんなときも真面目でみんなに気を使ってくれるとても素敵な子やな。エリちも花陽ちゃんもそうやけど真面目な子も多いんやな。
 話がまとまったところでみんながぞろぞろと屋上へ向かう。そんなみんなに付いていこうとすると、
「希、ホントに大丈夫?」
「も~、どうしたん? うち、そんなにおかしな顔しとった?」
「なんか、もう三回くらい見たことのある映画をまた見せられてるような顔してたわ」
「わ、そんな具体的な顔しとった?」
 比喩でもなんでもなくその通りだった。だからもしかしたらボロがでてしまったかもしれない。いけない、いけない、気が緩んでしも~たな。
「ええ、だから体調悪いんじゃなくて、何かあったのかもと思って」
「大丈夫やで」
 といつもののぞみんスマイルを見せるけど、さすがエリちは鋭いなぁ。でも、こんなこと人に話せるわけないし、話したところで信じてもらえるわけない。SF映画じゃないんや。
 これは現実。


「わ、新作出てるよー」
 部活の帰り、エリちの手を引っ張ってクレープ屋さんへ。新作と言っても実は食べたことあって美味しいの知ってるからこうして誘ったんやけどね。
「しょうがないわね~、新曲やって疲れたしモチベーションアップも重要よね」
 といいつつもエリちも新作クレープに目を輝かせている。やっぱりこういうの好きなんやなぁ。でもエリちは自分から行こうとしないから、こうしてうちや穂乃果ちゃんが引っ張って行く。
 新作はたっぷりのチョコクリームにバナナが入った名前もまんま『チョコバナナスペシャル』というもの。
「それにしても希ってすごいわよね。私はともかくこんな練習にいきなりついていくなんて」
「これもスピリチュアルパワーのおかげや」
 うちの周りに起こるいろんなことは全部こうして返すことにしてる。自分でも理由が分からんことがほとんどやし、それを説明するのにはこうして抽象的というか、イメージしやすい言葉にしたほうがええ。めんどくさくないし相手もそのほうがわかってくれる。
 それはうちがまだ会って間もない相手や、クラスメイトなんかにする対応。うちはエリちのことすごい信頼してる。だから、同じ対応をしたくなかった。
「……と言いたいけど、気になる?」
 いつもみんなにイタズラするときのような感じで、
「ちょっとズルずるしてるから」
「ずる?」
 練習でズルをするなんてできない。だからそんな言葉を使ったことにぴんと来ないのだろう。思惑通りポンコツチカな表情したエリちに続けて、
「そう、五回目なんやこの学園生活」
 という素っ頓狂な理由。
「こんなSF映画みたいなこと言ったって信じてもらえへんかもしれん。でもな、うち、卒業したくない……。えりちとずっと生徒会してたい、みんなと一緒にいたい、そう思ったら卒業式の前日で一年生に戻ってまうんや」
 呆然と聞いてるエリちに続けて、
「でも曲は違ってたりするんやで、九人揃った時の曲が前は『友情ノーチェンジ』やったし、今やってる曲が『Wonderful Rush』だったこともある。毎回違うみんななんやけどどことなく一緒。そんな毎日を続けてたら、そりゃ成績も良くなるし、踊りも歌も上手になるやろ」
 と肯定を求めるけどやっぱり唐突過ぎてエリちは固まっちゃった。うちはそこで硬直の魔法を解除する一言を言う。
「なんちゃってな」

 家に帰ってくるなり着替えもせずにベッドへ直行。倒れるように寝転んで手近にあったぬいぐるみに顔を埋める。
 あ~あ、言ってもうたわ。あんなこと信じてもらえるわけないのに。それがたとえ大好きなエリちであってもなぁ。
 適当にごまかして『いつもの希だな』って思わせるように話を終わらせてみたけど……。結果としてエリちにどう思われるとかじゃなくて自己嫌悪の気持ちのほうが強い。
 どうして言っちゃったの? エリちに甘えたかった? 時には厳しく、でも優しくてきれい、かしこくてかわいい大好きな人。だから甘えたいの?
 それもそうなんだけど、うち――わたしとみんなは違う時間を生きている。過去四回だから、十二年も同じ学校に通い続けてる。わたしだけ、高校十二年生。
 寂しいんだ。
 みんな同じなんだけど違う、みんなが違うんじゃなくてわたしだけがみんなと違う。
 どうして同じ時間を繰り返しているのかわたしにも分からない。映画で見たタイムリープというやつなんだろう。あれは未来から来た少年が持ってきた道具で時間を戻すことができるようになったんだけど、わたしはそんな道具をもらったことはないし、未来から来た猫型ロボットも家には居ない。
 そもそも家にはわたししか居ない。だから『ただいま』も言わない。
 やっぱり寂しいんだろう。
 初めてみんながここに来てくれた時のことを思い出す。真姫ちゃんとエリちがみんなを勝手に呼んで、言葉を出し合ってあの歌が生まれた。
 今はまだあの時ほど仲良くないから、もうちょっとしたらまた呼びたい。エリちとお泊り会もしたい。
 ……なんて、まだそんな段階じゃないか。
「あー食べてすぐ寝たら太る!」
 こういうときは美味しいものを食べよう。今夜は焼き肉!


 曲がハードだとやっぱり練習もハードになるなぁとみんなでわいわい騒ぎながら今日の練習も終わった。普段から海未ちゃんのハードなレッスンに耐えてるみんなも最近は寄り道もせずに家に帰ってゴロゴロしてるようだ。うちらも例外じゃなく、生徒会の仕事もせっせと終わらせてこうして帰路についてる。
ほな、またな@秋葉原
 いつもうちらは一緒に下校して、この『淡路坂』ところで別れるんだけど、
「希、今日少し付き合って」
 とエリちが誘う。ちょっと珍しいなと思いつつ『ええよ』と頷く。エリちは笑うといつも登ってる坂道を歩く。右手の方にはレストランが並んでて、登って行くと今度は総武線の線路が見えてくる。
IMG_8787
「ねぇ希、前のこと?」
「いつのこと? 最近たくさんありすぎてわからんわ」
 そんなことはない。エリちとは「あれとこれ」で会話できるレベルに仲良しだ。あまりにそういう会話をしすぎて、にこっちにドン引きされたことがあるっけな。でもうちとしはにこっちは真姫ちゃんと同じことで何度も喧嘩できるのは羨ましい仲だと思うんやけどなぁ。
「えっと、何度も同じ学園生活を繰り返してるってこと……」
「ああ、そんな冗談よ~覚えとったな」
 うちとしても話した後、猛烈な自己嫌悪に襲われたからよく覚えとる。あれからなるべくボロを出さないように気をつけとったんだけど、またどっかで気が付かれちゃったかなぁ。
「私には冗談に聞こえなかったのよ」
「かしこいかわいいエリーチカがそんな冗談を真に受けるなんてな」
「かしこいからこそ真に受けるのよ」
 うち――わたしを見るエリちの目は真剣で、その真剣な水色の目はわたしの嘘あっさりと見破る。
「あれから希のことずっと見てた。みんなの前では心底楽しそうにしてるけど、たまにこう……何度も聞かされた話をまた聞かされてるような顔をしてるのよ。みんなで決めたはずの振り付けをあっという間に覚えてしまって、それも何度も練習したみたいなキレのあるダンスをするのよ。もし希の冗談が本当ならそれも説明ができるんじゃないかと思ってね……」
「エリちの言うとおりや」
 わたしは嘘をつくのが下手くそみたいだ。
「わたし、そんな風に見てくれるエリちのこと、好き。何度巡っても何度同じ学園生活を続けてもエリちのこと好きになる。最初は生徒会に入るつもりはなかった。一人で超常現象研究会なんてやってた。エリちやみんなを勧誘するつもりが逆に懐柔されてスクールアイドル始めた。そしたらそっちも楽しくって、エリちのこと好きになって、卒業式の前日になったらこうして学園生活を繰り返すようになった。それからもエリちと少しでも一緒にいたくて生徒会を始めるようになった。エリちと一緒に学園生活を過ごしたい、エリちと一緒にスクールアイドルしたいそんなことばっかり想ってた」
 言葉がもう止まらない。これがわたしののぞみ。
「絢瀬絵里のこと大好きなの! だから、だから……」
 電車の音に阻まれて、エリちが何を言ったのかはわからなかったけど、わたしのこと抱きしめてくれた。もぎゅっと、力いっぱい、でもとてもやさしく。
 ループの中で何度もエリちに思いを伝えている。何度やってもどきどきだけど、こんなことは初めて。コップいっぱいにたまった気持ちが溢れてしまって、でもそれをすくってくれる人が居て、やっぱりわたしはラッキガールなんだなと思う。大好きなエリち。
 電車の音が遠くなると、
「嬉しいわ。私の思っていた以上の時間、私のことを思い続けてくれたのね……」
「うん……うん」
「私はあなたののぞみを叶えたいと思うわ。私の力が及ぶ限り、全力で何でもするつもり……」
 エリちはわたしと向き合い、そのきれいな水色の目でわたしをまっすぐ見つめる。
「言って、あなたののぞみ」
「わたしの、たったひとつののぞみは……絢瀬絵里、あなたと一緒にいること」
 

「エリちから買い物付き合ってなんて言うのは珍しいな」
「そうかしら? でもデートみたいでしょ」
「デートや」
 そう言ってエリちの腕に抱きつく。も~希ってば~と言いたげだけど、まんざらでもない表情のエリちを見てたら甘えたくもなる。
 学園生活を何度も繰り返してると言っても、細かく見れば起こることも違うし、自分でも違うことがしたい。繰り返しで何度もエリちとデートしてるけど毎回楽しみだし毎回違う。だいたいうちのワガママで振り回してるんやけどな。
 そんなエリちとのデートでやってきたのは渋谷。以下にも東京の都会ですっていうイメージのあるこの街はやっぱり人通りも多くて、今日もたくさんの人がハチ公前で待ち合わせしとる。だからうちははぐれないようにエリちの腕にもぎゅっとくっつくんや。
「ファッショニスタエリーチカは何の買い物なん?」
「今日はファッショニスタはお休み。東急ハンズに行きたくてね」
「雑貨とか買うん?」
「文房具ね。渋谷のハンズは品揃えがいいから」
 文房具やったら学校の近くにあるおじいちゃんおばあちゃんのやってるお店があって、学校の制服とか必要なものはそこで買ったりすることができる。なんやけどエリちは今回はそういうところにはなさそうなのが欲しいらしい。
 坂道を登って行くと変わった作りをしたビルがある。七階までフロアがあるんやけど、フロアのわけかたが二階―A、二階―Bみたいに中二階っていうんやろうか、そういう感じになってる。
 ちょっと階段を登って一階のC、文房具や事務用品などが並んでる。その中からノートのコーナーへ足を運んだエリち。ノートやったらどこでも買えそうな気がするんやけどと思って、
「ノート?」
「ええ、可愛いのを選びたいの」
 そう言ったエリちが見ているのはA5サイズの勉強用というより、何かメモしたり持ち歩いて使う用みたいだ。この時期やから勉強するもんだと思っとった。
「これとかどうかしら?」
 音符マークのついたブルーのノート。うちらアイドルやから音楽記号とか似合うかもな。
「ええんやない? エリちにぴったりで」
「私もだけど希はどう?」
「うちには可愛すぎるかもな」
 こういうのはにこっちやことりちゃんのほうがええかも。そういうとエリちはノートを戻してまたコーナーを眺め始める。
「それにしないの?」
「私だけじゃなくて希も使うのよ」
「ほへ」
 素っ頓狂な声が出た。うちも使う? エリちはすごい真剣な表情。前にこんなことあったっけ?
 エリちとの思い出は何周したって覚えてる。でもその中に一緒にノートを買いに行った思い出はない。
 大好きで、何度も何度も読んできた物語が急に違う本に変わったような気分だ。
「これはどうかしら」
 百合の花が咲き乱れるようなきれいなノート、それに名前をつけるなら『百合の迷路』きれいだけどすぐに壊れてしまいそうな『硝子の花園』
「きれいや」
「これにしましょう」
 うなずく。
「そうだ、ペンも買いましょう。このノートだけに使うペン」
 そのノートの用途をまだ聞いてないんだけど、ええやんとすぐに返事。
 すぐ横のたくさんあるペンの中から『これっ』と一緒に選ぶと、顔を合わせて笑う。こっちはおそろいじゃなくてもいい。

 秋葉原へ戻ってくるともう夕方やった。淡路坂のレンガが夕焼けに照らされて真っ赤になっとる。
「このノートの使い道はね、二人の約束を書くものなの。約束ノートよ」
「約束ノート?」
 小学生みたいな響の単語をエリちの声で言われてしまったので、思わずオウム返し。
「これから二人でやりたいことをたくさん書いていくの。すぐにできないこともたくさんあると思うけど、忘れないように、いつか叶うように。いままでの私はこんなことしなかったでしょ?」
「う、うん」
 本当に思わぬことをエリちが言い出したので、うち――わたしはただ、頷いて言われたことを飲み込むしかなかった。
「『もし』じゃなくて『きっと』できるように。希も、私としたいことたくさんあるでしょ」
「うん、ある! 一緒にパワースポット巡ったり、江ノ島行ったり、水圧で空をとぶやつしたり、流しそうめんやったり」
「でしょう? だからそれを書いていくの」
 エリちから買ったばっかりの真っ白いノートを渡される。受け取ろうとすると、胸がドキドキしてきて、痛くなってくるほどうれしくって、
「ノートがいっぱいになるくらい、一緒にいましょう」
 そう言われてるともうたまらなくってエリちを抱きしめる。
 エリちは何も言わないけど、優しく髪をなでてくれる。
 そんなエリちが大好きだ。
「ところで水圧で空を飛ぶやつって何?」


「新曲ができたわよ」
 と真姫ちゃんがやってくるとみんながわーっと駆け込む。まるでハロウィンにお菓子をねだる子供達みたいやな。
「ほーら、仮歌聞かせてあげるからどいたどいた」
 みんなをかき分けて机の上にレコーダーを置く。顔を近づけたって見えるものじゃないのに穂乃果ちゃんや凛ちゃんはレコーダーに迫る。
 うちは曲を知ってるんやけどね。
「かけるわよ」
 このラブライブの決勝の曲は『KiRa-KiRa Sensation!』そうじゃなかったときはなかった。
 なかったはず。
 聞こえてきたのは静かに始まるイントロではなく、明るいと喜びの歌詞。
 あれ、このメロディ聞いたことがない? 真姫ちゃんの歌う、歌詞も違う。そう気がつくのに時間がかかった。
「真姫ちゃん、この曲のタイトルはなんていうん?」
「『Oh, Love & Peace!』よ」
「真姫が歌っていた『愛してるばんざーい!』と同じ、愛の歌です」
 と作詞した海未ちゃんが付け加える。
 そっか。これまで何度も繰り返してきた学園生活に初めての変化が起こったんや。
 初めて聞く音楽やから、今までみたいな練習じゃ今度こそ追いつかんなぁ。
「の、希っ!? どうしたのです?」
 みんなが『愛と平和の歌』に聞き入ってる中、うち――わたしの目から何か流れてたようだ。海未ちゃんが声をかけてくれてようやくその感触に気がついた。
「ごめんな、あまりにいい歌やったから……」
 エセ関西弁を維持するのに精一杯だった。
 初めての経験がこんなにも嬉しい事だったなんて、おかしなことに感動してしまったと思って笑ってごまかそうにも涙は止まらない。
 わたしの名前が呼ばれたと思うと、もぎゅっと優しく包まれる。エリちだ。もう~こんなことされたら甘えるしかないじゃない。
 子供みたいに大泣きはしないけど、曲が終わるまではエリちに甘えることにした。


 それからわたしの学園生活は大きく変わった。今までになかった音楽、今までになかったイベント、今までになかったやりとり、みんなといることは今までも楽しかったけど、それ以上に楽しい時間を過ごすことができた。
 ラブライブが終わって、わたし達の活動は終了。そしてよいよ明日は卒業式になった。
 そんな日にエリちがうちに泊まりに来ると言って寝間着とかおみやげとかを持ってやってきた。楽しかった今までの時間を振り返っていたらあっという間に夜になる。
 エリちと同じベッド。わたしと何年も付き合っていたみたいな、そんな感じがする。わたしはともかく、エリちは本当に一年にも満たないというのに。
「エリちのおかげで学園生活が変わった。本当にありがとうな」
「私はそんなだいそれたことはしてないわよ。変えようと思ったのは希が願ったからよ」
 と笑いながら謙遜して言うエリち。せやけどうちはとても感謝してる。感謝しきれないほど。
「でもなんかお礼がしたいんやけど……」
「も~、そんなのいいって」
 ぽんぽんと頭を撫でてくれるのもうれしくって、エリちが好きでたまらなかった。
「せやったらうちでお茶ごちそうさせて! それどころか毎日ご飯作ってあげる、炊事洗濯なんでもするで!」
「一緒に住み始めたらしてちょうだい」
 そんな他愛もないやりとりをして笑い合う。そんな時間は有限だからこそ、大切にしたい。
「ねぇ希、卒業したら、フランスに行って『貴婦人と一角獣』を見ましょう?」
「えっ?」
 唐突にエリちが言い出したので、すぐには返事ができなかった。
「この約束は高校を卒業しないと守れないわよね」
「う、うん」
「だから希、卒業しましょう。私達、たくさんやりたいことがあるでしょう」
「うん……うち、エリちと車でいろんなところ行きたい。静岡おでん、香川のおうどん、長崎のカステラ、いっぱい食べたい」
「食べるのばっかりね」
 と優しく笑ってくれるエリち。自分でも何言ってるのか分からなくなってきたけど、私も同感よと頭をなでてくれるのがすごい嬉しくて、エリちのこと大好きで、そんな気持ちがたくさんたくさん涙と一緒にあふれてきた。


 目が覚めた。今日を迎えるのがちょっと怖くて、でも今日という日を待っていた。
 ケータイへ手を伸ばして時間を確認しようとする。今日が何年何月何日なのか。今日が卒業式の日なのかどうか。
 するとわたしの腕を掴む手があった。高校生になってから一人暮らしであるはずのわたしの家にわたし以外の誰かがいる。時間が戻っていればそれはありえないことだろう。
 わたしはケータイを確認するのをやめる。そんなことをしなくても、わたしの時間が進んだことはこの手が教えてくれた。
「おはようエリち」
 朝の弱い彼女へ朝の挨拶。家ではテレビとラジオが話し相手だったわたしに『おはよう』をいう相手がいる。それがこんなにも嬉しい。
 今日は卒業式。


 八月、うちらはフランスで行くことにした。大学入ってからすぐにバイトを始めて、同じベッドに入って寝るまでプランを練って、まるで遠足に行く前の子供みたいに計画を立てた。
 うちのルーツとも言える『貴婦人と一角獣』を二人で見に行く。
 飛行機に乗り込みようやく一息。うちらだけで行く始めての海外というのもあって、手続きやら準備やらであたふたしてようやく雑談ができる状態に。
「『貴婦人と一角獣』についてはいろいろ調べたけど、やっぱり知識じゃなくて生で見るのが一番よね」
「百聞は一見に如かずとも言うしな。多分、実際に見るとただならぬオーラというかスピリチュアルな物を感じると思うで」
「希が言うならそうなんだと思うわ」
「うちも子供の時以来やからすごい楽しみなんよ。それと、エリちと叶える大きな約束だから……」
 約束ノートを見せながらエリちを見つめる。エリちが約束ノートを用意してくれなかったら、エリちがフランスに行こうなんて言わなかったら、今のうちはここにはいない。
「希……私もあなたと叶える約束が楽しみだわ」
「エリち……」
「ちょっとにこちゃんー、私のサングラス返しなさいよー」
「いいじゃないー機内じゃ必要ないでしょこんなのー」
「かよちん遅いにゃー」
「ごめんね凛ちゃん、お手洗いがどこか迷っちゃって」
「ことり、忘れ物はありませんか?」
「大丈夫だよー。前みたいなことは繰り返さないよー」
「そうですね。ことりなら心配ないですよね」
「海未ちゃんーなんで穂乃果の方向いて言うのー?」
「って、なんでみんなついてきてるのよ!」
 エリちが後ろの席のみんなへツッコミを入れた。なんだか高校時代に戻った気分や。
「えー、いいじゃん。みんなで卒業旅行だよー」
「絵里たちが卒業したのは五ヶ月も前です」
「まあまあ海未ちゃん細かいことは気にしない」
「は、花陽海外行くの初めて……」
「凛もだよー」
「ところでにこちゃんフランス語喋れるの?」
「あ、あたりまえじゃない……ば、バームクーヘン?」
 なんだかこの答えを見つけるのにくだらない遠回りをした気がする。卒業したってみんなもエリち一緒だ。同じ時間を繰り返してまで一緒にいたいと思う必要はない。
 わたしのたったひとつののぞみはもう叶っていた。


・タイトルと一角獣について。
 参考文献があったら教えてほしいということで小説「機動戦士ガンダムUC」を記載させていただきました。小説版でもOVAでもご覧になった方はすぐに分かったと思いますが、タイトルはここからとっています。原文では「私のたったひとつの望み」です。この「望み」の部分をのんたんに引っ掛けるために全てひらがなにしました。
 ラブライブもガンダムUCも僕にとって「可能性」の物語なのでいい感じになったと思います。
 またプロット段階のタイトル案は「希がいきなりμ'sの練習についていけるわけ」でした。そのまんまですね。

・ループについて
 実はこの話の展開は違うアニメの二次創作SSのアイディアでした。ですが、そのアニメはこんなSF要素皆無だし、唐突にこの物語を展開するには無理があったのと、今更このアニメのSSを投下しても時期遅れすぎて需要がないと思い没に。
 それをのぞえりに当てはめたところ合同誌のテーマにドンピシャだったので、採用しました。

・感想について
 この合同誌たくさんの人が感想をつぶやいたり、ブログの記事にしてくださってます。そのおかげか、このSSにも感想をかなり頂きました。「BGMがUNICORN」だった、「最後のバームクーヘンでクソワラタ」、「この合同誌で一番好みだった」など、本当に嬉し感想ばかりでした。ありがとうございました。

・中の人ネタについて
最初にも書きましたらこのSSは生きる希望こと「RADIOアニメロミックス ラブライブ!~のぞえりRadio Garden~」内での出来事や発言などがネタにされています。約束ノートや「ファッショニスタエリーチカ」など・・・。
ラジオはニコニコ動画で全部が公開されています。年内までの公開らしいので、皆さんも聞きましょう。
あ、でもにこちゃんの「バームクーヘン?」は中の人が好きなアニメですね。
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雨竜三斗

Author:雨竜三斗
雨竜三斗は文章系創作活動の名前

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