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TARI_TARI_SS「江ノ島の中心で愛を叫ぶ」

 最終回を見てからTARI TARIは書きたいと思って夏コミは出す予定でいますが、それ以外を書かないのは惜しいです。5人の日常をもっともっと見ていたいと思ってる僕としてはもうなければ書くしかないわけです。
 Twitterで漫画版の和奏と来夏の百合っぷりが話題になってティンときたのでこの機会に書くことに。

 というわけで来夏×和奏な百合SSを漫画基準で書いてみました。シーンを書くにあたってイメージに使った写真も一緒にアップします。

 Twitterでもつぶやきましたが、TARI TARIはそろそろ放送して1年ぐらいになるのですが今でも話題にあがったり、Twitterで語られたりします。「ああ、愛されてるなぁ」と思ったり「愛してるなぁ」と思います。

 前書きが長くなりましたが、本編をどうぞ。


 湘南は観光客や海水浴に来る人で大賑わい。わたしたち地元民も水着で出歩いたり、ふと思って泳ぎに行ったり、そんな人たちに紛れて夏を満喫する。
 でもわたし宮本来夏は悩んでいた。悩むあまり『考える人』のポーズをとっていたら誠に見られて恥ずかしい思いをするほど悩んでいた。このままだと禿げてしまう。
「いや、女子は禿げないでしょう。うちの父親じゃないんだし」
 わたしの前の席でコーヒーをかき混ぜる紗羽が否定する。
「え、あれって剃ってるんじゃないの?」
「あんな性格だからハゲなの」
 と不機嫌そうに紗羽は言う。また喧嘩したのかな。
 今日も今日とて二人で『江のまる』にやってきた。お昼頃はまだ空いているけど、そのうち混みそうだから早目のお茶だ。
 ホントは和奏も誘いたいけど普通科の補習でウィーンと授業デートだ。お互いその気はまったくないだろうけど。
「で、何悩んでるの?」
「デートってどう誘うの?」
「あんた、7月の頭にどうやって和奏をデートに誘ったのよ」
 7月の頭。わたしはいても経ってもいられず和奏をデートに誘って、田中のバドミの大会の応援や、偶然知り合ったコンドルクインズのライブなどいろいろ連れまわした。最終的に複雑だった和奏との関係や、悩み、探し物をいっぺんい解消したとても密度の濃い一日を過ごした。
「あれは勢いで……」
「勢いがあればできちゃうからねぇ来夏は」
 と呆れたようなそんな顔をしてコーヒーに口をつける。
 そう、あの時は持ち前の行動力とテンションで一気に事が運んでうまくいったし、あれはそういう意味でデートに誘ったわけじゃなかったからよかった。
「どこか行きたいとかあるの? 買い物とかだったら素直に誘えるんじゃない?」
 口実が違うとやっぱり難しいのかもしれない。それなららしい口実作って誘うのが自然だし、変な緊張しなくてもいいとわたしも思う。
 でもわたしは、
「和奏と、展望台登りたい」
「江ノ島の?」
「江ノ島の」
「和奏にとって地元過ぎるから誘いにくいのね」
 和奏は江ノ島の中に暮らしている。わたしや紗羽のように朝見るのは島の外から見る展望台じゃなくて、中から展望台が目に入る。身近な物過ぎてわざわざ登ってその景色を眺めたりとかはしなさそうだ。あと理由としてはやっぱり、
「あと、恥ずかしい」
「はぁ……」
 複雑な気持ちが絡まったため息を紗羽はする。
「あんたはホントかわいいわ」
「だってー」
 恥ずかしいものは恥ずかしい。だから去年の発表会だって失敗しちゃったし、今もこうして悩んでいる。人前で歌うことには慣れてきたし、今年は(わたしの中では)発表会も大成功だったし、特訓の成果は出てるんだけど……。こういうのはどう特訓すればいいの?
 少し悩んで紗羽は決心したように、
「仕方がない、私が一肌脱ぎますか」
「脱ぐの!」
「服は脱がないわよ」
「なんだー、田中呼ぼうと思ったのに」
「呼ぶな! っていうかどうして田中なの?」
「自分の胸に聞いてみたらー」
 ああ、紗羽は気がついてないのかぁ。やっぱりこういうのは鈍感になっちゃうんだねー。うんうん。田中がんばれ。わたしはそれなりに応援してるから。でも、紗羽の胸はわたしものだから譲らないけど。
「っていうか、あんたたち付き合ってるじゃないの?」
 付き合ってるという定義がいまいちあいまいだけど、わたしの認識はこうだ。
「付き合って、ないよ。多分」
「多分って……。和奏も来夏もお互い好き好きオーラだしまくりなのに?」
 確かにわたしは和奏のこと大好きだよ。手を繋いで歩きたいし、またギューってしてほしいし、頭なでなでしてほしいし、あふれんばかりの笑顔で『大好き』って言ってほしいし、もっと和奏とあんなことやこんなことがしたい。
「また肖像権侵害? そんなことしてると怒られるわよ」
 紗羽の言葉で現実に戻ってくる。危ない危ない。
 でも和奏がわたしのこと好きなの? そりゃ~、今は仲良く一緒に歌ってるし、帰りも駅まで一緒だし、メールもたくさんするようになったし、いろんなスキンシップをするようになった。
「好き好きオーラって……。そんなに出てるのかな?」
「とっても。だから私も来夏のこと任せられるんだからね」
「紗羽……、うん。ありがと」
「じゃ、ここ来夏のおごりね」
「はぁ?」
「応援費」
 紗羽はいたずらな笑顔でわたしに言う。


『14時、サムエル・コッキング苑前で和奏が待ってるって』
 という紗羽の伝言メールを見て江ノ島までやってきた。観光シーズンで人も多く、今日も大道芸をやっている。その人ごみから離れて、日向ぼっこしている猫を眺めている。猫といえば和奏を思い出す。
 わたしは和奏のこと好きだよ。それは恥ずかしいけど素直に認める。発表会のときみたいに抱きしめられるとすごく温かくて、手を繋ぐと嬉しくて、一緒に歌うのがとても楽しい。
 和奏もわたしといると楽しそうにしてくれるようになったし、お互いが多分同じ気持ち。紗羽の言うような『付き合ってる』かどうかは分からないし、お互いのこと『好き』とか『愛してる』なんて言葉を使ったことはない。
 7月のデートのことはノーカン……だと思う。音楽や気持ちを取り戻してくれたのはすごくうれしかったし、そんな和奏のことギュってしてあげたかったのは確かだけどね。
 だから、片思いのようなものなのかもしれない。
 そんなことを考えながら、それをぼけーっと眺めていると知ってるポニーテールがやってくる。
「わかなー」
「来夏、今日はどうしたの?」
「ふえ、和奏が呼んだんじゃないの?」
 和奏からデート――多分和奏は遊びに行く程度の認識だと思う――に誘ってきてくれたと思ってたけど、なんだか認識がずれている。わたしが? 和奏に?
「来夏が来るよう言ってたって紗羽からメールが――」
 図ったな、紗羽!
 ひと肌脱ぐってそういうことか。わたしと和奏をお互いが呼んでるように仕向けて呼び出す。なんてべたな、もっとすごいことをしてくれると思ったのにこんなことかよ!
 いや待てよ宮本来夏。逆に考えるんだ、これは和奏をデートに誘うチャンス? べたなやりかただけど、紗羽が作ってくれたチャンスを生かすべきか。
 宮本来夏、がんばれ!
「わ、和奏! わた、わたしと……」
「わたしと?」
「……展望台、登ろう?」

pic694-2.jpg
 夏のサムエル・コッキング苑は緑が多くとても過ごしやすい。わたしも地元民だから、そこまで頻繁にくるわけじゃないけど、家族でたまに来ることもある。
 イベントで花がたくさん咲いてたり、灯篭がたくさん置いてあったり、展望台がライトアップされたりするけど、今日は特にそういう予定もないらしくセミの鳴き声がうるさいだけだ。
 ひんやりとしたやわらかい和奏の手を繋いで、木々の間を歩く。
 生い茂った木陰は涼しく、有料じゃなければ涼みに来てもいいなと思った。
 入場料はコッキング苑だけは200円、展望台を含めると+300円で500円。ちょくちょく通うにはちょっと痛い。月に1度くらいならいいかもしれないけど。
「今日は来夏だけなの?」
「あ~、うん。前にいろんなところ回ったでしょ、でも今度は和奏と二人でおでかけしたくって。ああ、もちろん紗羽と一緒がイヤってわけじゃないよ。紗羽とは付き合い長いしいろんなところ行ってるから、今度は和奏と一緒がいいな~って。思ってみたり、思ってみたり」 
 大事なことなので2回言った。
 仕掛け人の紗羽はというと、多分家かどこかでわたしの報告を待っている気がする。くそー、終わったら思いっきり文句言ってやるんだからー。
「うん。確かに、展望台もコッキング苑も身近すぎてほとんど行ったことなかったかも」
「やっぱりそうなんだ。ねえ、また今度も一緒にどこか行こう? 身近すぎて行ってない湘南、鎌倉名所めぐり」
「うん、いいよ。今度は大仏さん見に行こうか」
 にこりと笑う和奏を見てわたしも顔が緩む。次のデートに自然に誘えてる気がする。
 このデートもそうだけど、あまり張り切ったり、気を張ったりする必要はなかったのかも。
 あんずるよりなんとやら、あの時もそうだったけどいざ歌い始めれば意外とできるものかもしれない。
 和奏と一緒なら。


「すっずしい~」
 木陰がいいって思ったけど、やっぱり室内が一番かもしれない。
 エレベーターから出るとエアコンの効いた展望室と、見てるだけで冷たそうな海と、涼しげな空が見える。通学路の坂もそうだけど、湘南を見下ろすのもいいものだと思う。
pic694-1.jpg
「和奏の家見えるかな?」
 ぐるりと回って南側へ。『江ノ島亭』という屋根に書かれた文字がとても目立つ。
「ここからだと見えないかな。木に隠れちゃってるかも」
「そっかー」
 和奏のおうちは『こかげや』というお土産屋さん+お茶屋さんだ。和奏のお父さんが一人でがんばってて、この時期は特に忙しそうだ。もちろん南京錠も売っている。
 南京錠。江ノ島では愛を誓うカップルや夫婦が名前や思いを南京錠に書くという儀式というか習慣みたいなものがある。なのでお土産やさんには南京錠が売ってるし、龍恋の鐘という場所には南京錠がびっちしである。
「和奏はさ、龍恋の鐘って鳴らしたことある?」
「ないけど、家の近くだとよく鐘の音が聞こえるかな」
 江ノ島にはカップルで来ると芸能の神様が嫉妬して二人を別れさせてしまうというジンクスがある。でもそんなカップルの永遠の愛を叶えてくれる龍恋の鐘なるものがあったりする。
 その龍恋の鐘は和奏の家の近くだったりする。
 だからってわけじゃないけど、もしこの恋が実るとすれば和奏と鐘を鳴らしたい。
「……海が、きれいだね」
 和奏の視線は海に移動していた。気持ちがいいほど青い相模湾。
「わたしたちの住んでる場所ってこんなにきれいなんだね」
 ちょっと物悲しげにつぶやく。そんな和奏の手をぎゅっと握る。
 お母さんとよく海を見ていたのかな。それでお母さんのこと思い出してたのかな。わたしは和奏のお母さんのことよく知らない。わたしの知ってる和奏のお母さんはあの歌、『心の旋律』しかない。でも、その歌だけでお母さんがどんな人だったかはなんとなく分かる。
 鼻歌でサビを歌う。いつの日も、この心のまま。
「上行こう! もっと高いとこ!」
 和奏の手をとり、光が回る場所を目指す。


 高いところにあるからだろうか、太陽の暑さを中和するような風が吹く。
「青い! 空も! 海も! わたしたちも!」
「なんでわたしたちも?」
「青春ってこと! わたしも和奏もまだ17歳か18歳! 部活をがんばったり~、恋して大切な思い出作ったり~」
 と光と一緒に回る。パノラマ未来地図が広がって見える~。
pic694-3.jpg
「転ぶよー」
「だ~いじょうぶ~、江ノ島の~天使が見守ってるから~」
「江ノ島の天使?」
 藤沢の町並みを背にして和奏の不思議そうにしてる表情をのぞく。
「うん、わたしの前にいる」
「……わたしっ?」
「だって、天使ちゃんはピアノ弾くし」
「そしたら声楽部にも」
「うん、上野さんマジ天使。でもね、和奏はもっと天使」
 わたしの前に現れた音楽の天使。きれいなハーモニーと、みんなを束ねるピアノ、和を奏でるわたしの天使。
「和奏、わたしはね」
 もう抑えられない。片思いかもしれない、和奏は性別にこだわるかもしれない、他に好きな人がいるかもしれない、でもそれでも。
 振り返り、息を吸う。神奈川県は藤沢市の町を改めて一望する。
 あの日、江ノ電越しに思いっきり気持ちをぶつけたみたいに、これ以上でないほどの大きな声で、
「わたし! 宮本来夏はっ! 坂井和奏のことが! 大好きだあああああああああああああああ」
 日ごろの練習で鍛えた腹式呼吸の力を今こそ発揮するとき。肺から空気がなくなるとすぐに吸い直して、
「もっと手を繋いで歩きたい! デートだってしたい! 鐘だって鳴らしたい! 南京錠一緒にかけたい! 高校卒業しても一緒に居たい! これからもずっと一緒に居たい! ずっと、ずっと、ずうううううううっといっしょ――」
「来夏!」
 和奏の声が聞こえたと思ったら、声がでなくなっていた。あれ、江ノ島の神様に嫉妬されて声を取られちゃったかな?
 口も動かない。何かで塞がれてる? やわらかい感触。幸せな気分。
 目と鼻の先に和奏のかわいい顔がある。それだけ確認するとわたしも目をつぶる。
 ホントに嫉妬されちゃいそうなことしてる。
 ちゅ、って離れる音がした。
 目を開けるとまだ3時前なのに夕焼けみたいに真っ赤になった和奏の顔。
「……恥ずかしいから。恥を上書き」
 わたしも自分のしたことと、和奏にしてもらったことと少しずつ思い出してきた。足元から湧き上がる気持ち。
「あの、わ、和奏……、わたし、和奏のことす、好きでいいの?」
「音楽を取り戻すきっかけをくれたのは来夏だし、歌も、声も、明るさも、行動力も、わたしは好き。わたしは来夏と一緒に歌を歌いたいって思ってる。これって好きってことで……いいよね?」


「これください」
 展望台を満喫したあと、わたしたちは南京錠を買った。でもここは和奏んちじゃないけど、
「自分のお店の買わないの?」
「多分、お父さんがくれないから……」
 そうかな?
「わたしと来夏がその……恋人同士っていうのなるべくみんなには内緒ね。特にうちのお父さんに」
「どうして?」
「お父さんに知られちゃったら、家から出してくれなくなりそう」
 そんなに厳しいお父さんには見えなかったけどなぁ。和奏のこと大切にしてる優しいお父さんにわたしは見えるけど。
「じゃ、いこっか」
「うん」
 わたしたちは江ノ島の石垣を二人で歩く。これから二人で鐘を鳴らすんだ。
 そしたらいつでも、いつまでも一緒に歌える気がする。新しい世界へ行っても。



 あとがき
 TARI TARIについて語ると切りがないのでほどほどに。
 漫画版だと夏休み前に和奏と来夏が仲良くしてるのでアニメ基準とは違う時系列でかけます。アニメだと5人を書ける時間というのは限られるので漫画基準で書いてみるのもいいかもですね。
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