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秘封倶楽部的 東海道幻想ツアー サンプル

 というわけで秘封倶楽部的 東海道幻想ツアーのサンプルとしてプロローグの次、最初のエピソードを丸々上げます。告知記事はこちら
 同様にpixivにも上げたりしますが、内容は同じものです。pixivアカウント持ってないって方向けですかね。

 というわけでどうぞ。


「やっと着いた~」
 思いっきり伸びをすると、夕焼けがすごく綺麗に見えた。10時間以上も電車に乗ってたからか、この開放感は気持ちいい。
 夕焼けに染まるビル街。それでも影が多いのは建物が高いから。京都だとこの高さの建物は建てちゃいけないことになっているから、ちょっと新鮮。
 私がそんな田舎の風景を眺めていると蓮子は隣にやってきて、
「さて、宿を探さないとね」
「はい?」
 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。宿を探す? あれ?
 蓮子はそんな驚きの発言をさわやかな声と顔でする。夕焼けに照らされて綺麗な表情をしてるけど、発言内容はまったくもっておかしい。
「蓮子、宿泊先は任せてって言ってなかった?」
「言ったわよ」
「じゃあ、探すってのは……」
「宿探しは任せてってこと」
「決めてあるんじゃないの?」
「そんなわけないじゃない」
 さも当たり前のように言われた。私は間違っているのかしら?
 蓮子は時計がなくても時間が分かるくせに時間にルーズだし、他人に流されない自分のペースってのを持ってる人なのはよく知ってる。でもこれマイペースってレベルじゃない。
「さーて、探すわよ」
 と意気揚々の蓮子。私はため息。この時期当日いきなり泊まれる場所を探すのは難しいんじゃないかと思う。西洋人並みにのんきな私でもそれは分かる。でも蓮子は知らないのか、知ってて言ってるのか、どっちにしても宿探しをがんばらないと駅の構内で蓮子と添い寝をすることになる。どうせ添い寝するなら場所を選びたい。
 ああ、田舎の空気が目にしみるわ。それに夕焼けってこんなに綺麗なのね。
「そこを動かないでっ!」
 急に呼び止められると蓮子はホールドアップ。私も思わず足を止めた。
「不思議な反応は君たちからか」
 振り向くとそこには私たちより年下っぽく見えるセーラー服がいた。金髪のツインテールが夕焼けに反射してまぶしい。そして手にはドラなんとかレーダーっぽい丸い機械。
「蓮子、7つそろえると願いが叶うボールを持ってたりする?」
「メリーこそ、変な電波出してるんじゃない?」
 お互い心当たりはないようだ。
「私の『世界不思議発見装置』が急に反応しだしたんだ。それを追ってみると君たちがいた。君たちはなにか不思議なことを隠しているっ!」
 とセーラー服美少女戦士は『意義あり』のポーズ。
 いきなり何を言い出すかと思えば、電波なこと。類は友を呼ぶってことかしら……。でも私をそれにカウントしないでほしいわ。
「そいえば妖怪『ムラサ』ってセーラー服らしいわよ」
 また唐突に蓮子が言い出す。
 島根県のほうに伝わる妖怪『ムラサ』は、最近の研究でセーラー服っぽい服装をしていたということが分かったらしい。ふとそれを思い出したようだ。でもここは神奈川県は藤沢市、蓮子に内蔵されてるGPSまで狂ったの?
「私はムラサじゃないぜ。違う妖怪なら会ったことがあるけどな」
「マジっ? その話詳しく」
 蓮子が光の速さで飛びついた。





 セーラー服な彼女――北白河ちゆりにつられてやってきたのは藤沢市内の大学。校舎は私たちの通う大学と比べれば古臭い。遷都が行われる前なら綺麗な建物って言われてたのかもしれない。
 キャンバスの中もそれなりの年季を感じる。壁は補修した箇所があるし、バリアフリーの環境だってあとからついたように見える。
 夏休みだからか人は少ないので部外者の私たちでも特に気にせずにいられる。でも蓮子は人がいても、講義のある日でも平然と入っていくだろうと思う。
 5階の一番奥の部屋。どことなく人が近寄らなそうな雰囲気がする部屋にやってきた。その雰囲気をたとえるなら、蓮子の部屋。あそこに入れるのはたぶん本人と私だけだと思う。それだけあの部屋はおかしい。
 ソファーに座るよう言うとちゆりは棚からファイルを取り出し、ぺらぺらとめくりだす。妖怪の情報でもまとめてある資料だろうか。でも妖怪の研究って……。
「あったあった、ほらこんなやつ」
「あ」
「この人、電車で……」
 蓮子も気がついたようだ。写真の女の人は、格好とかはだいぶ違うけど電車でみたあの人だ。でもこの人……。
「足がないわね」
 蓮子の言うとおり、写真の人は、絵に描いたような幽霊みたいに足がない。やっぱり幽霊だったのか。でも魔法使いみたいな帽子と杖、どっちなんだろう。幽霊の魔法使い? 魔法使いの幽霊?
「でも足がないからって幽霊と決まったわけじゃないよ」
「そうなの?」
「たぶん」
 たぶんって、蓮子がマジで言うんだから信じそうだった。そもそも蓮子って幽霊見たことあるのかしら? 私はあるけど。
「あらお客様?」
「だぜ」
 部屋に誰か入ってきた。赤い髪に赤い服、三倍早い人? でもマスクがないわね。
「お邪魔してます」
 とりあえず、挨拶。多分大学の関係者あたりだろうと思う。
 蓮子が流れ弾の豆鉄砲に被弾したような顔をしている。もしかして見つかっちゃまずい人物? 逃げる準備でもした方がいいかしら?
「も、もしかして『岡崎夢美』教授ですか?」
「あら、蓮子お知り合い?」
 どうやら逃げる準備は必要ないようだ。でも私は知らない名前だ。
 蓮子が『まさかこの方が……』みたいな顔と声で言う。
「『岡崎夢美』教授、とある説を唱えて有名になった方」
「良くも悪くもね」
 と付け加える。
「私は間違ってないと思います。『魔法』は確かに存在します。
「そうよ。でも証拠を持ってくるのを忘れちゃって……」
「ご主人様が暴れるからだぜ」
「あなたがパイプ椅子で殴るからよ。それとご主人様って呼ぶのやめなさい」
「え~」
「え~、じゃない」
 暴れるとか、パイプ椅子とか、ご主人様とかなにやらアレなことを連想させる言葉が出てきた。
「この二人どういう関係?」
 と蓮子に耳打ち。
「SとかMとか……」
 ガタァ!
「よせ!」
「そこまでよ!」
 すぐさまツッコミが入った。もう……蓮子ったら。今回そういう話はなしなのに。
 荒ぶる『そこまでよ!』のポーズを解除した岡崎教授が、
「お話を戻しましょう。あなたたちは魔法に興味があるということですね」
「もちろんです。それで彼女に連れられてここに来ました」
 だぜ、とちゆりが付け加える。でも私は疲れたし、そろそろ夕飯にしたいわ。
「じゃあ、お話しましょうか」




「というわけよ」
 ファミレスでの岡崎教授の話を解釈するとこうなる。
 教授は世の中のどの分類にも当てはまらない新しいエネルギー『魔力』が存在することを学会に発表。しかし、学会で馬鹿にされてしまい。悪い意味で名を上げてしまった。蓮子みたいに尊敬してる人も数名いるらしいけど、笑われることの方が多かったらしいわ。
 それを証明すべく教授の作った可能性空間移動船『夢時空』に乗って幻想郷にやってきた。そこでは魔法を使う少女、幽霊、パラレルワールドの自分がいた。魔法は確かにあった。
 でもあまりの驚きに見ただけで満足してしまったのか、証拠もなにも持たず帰ってきてしまった。
 そしてパフェの3つ目が届く。
「ご――教授、3杯目はさすがに多いぜ」
 岡崎教授の前にはすでに空になった3つ目のイチゴパフェがおかれている。確かに多い。私だったら1つで十分、2つ目で砂糖をはくわ。
 それをこの教授は話しをしながらわんこそばでも食べるように平らげていった。甘党にしては度がすぎる気がするわ。
「私は人より多く頭を使うからこれだけ糖分が必要なのよ。それだけ消費してるから太ったりもしないわ」
 多分私も蓮子も同時にこう思っただろう。
(Lみたい)
 昔人気になった漫画のライバルキャラがこんな感じに甘党だった。彼は主食がデザートというレベルだったのだが、まったく太らず、むしろやせていた。それは普通の人間より頭を使うためその分の糖分を必要とするからという解釈がされていたけど、無理があるという結論に至った。ドラマになったときに役者さんは大変だっただろうなぁ、とのんきに蓮子と考察したことがある。
 だけどそれを実践している人間が目の前にいる。教授の話より教授の方がファンタジーだわ。
「私たちは幻想郷で魔法を見た。別の世界とはいえ、魔法は確かにあったのよ」
「パフェ食べながらだとカッコつかないのぜ」
 ポカッ!
 コメディ漫画みたいな音がした。ちゆりの頭には大きなこぶ。
「魔法――といっても魔力の源になるのはたくさんあったわ。五行、三精、四季の属性、潜在的に持っているエネルギーを呪文や杖で魔力に変えるもの、魔道書や宝石に詰まってる魔力を使うもの、きのこや植物を加工して魔力にしてるもの、たくさんありすぎて目移りしたわ」
 どれもファンタジー小説に出てきそうなものだ。
 自然や精霊、妖精の力を借りる属性魔法。五行――火水木金土、三精――日星月、四季――春夏秋冬、は身近で分かりやすいと思う。これらの魔法は使うときの時間、日時、季節などにとても影響をうける。たとえば火曜日に火の属性魔法を使えば強くなるし、反発する水の属性魔法は弱くなる。日曜日の昼に日の属性魔法を使えば効果は2段階上昇する。このように属性魔法は自然の影響を受けやすい魔法なのだという。でも属性魔法を使うには属性を操る魔法が必要になるわけで、人間がこれを習得するには人間をやめて修行する必要があるらしい。四季の植物を操る妖怪がそう言っていたらしい。
 潜在能力を使った魔法はそのままだ。使用者に魔力があればそれをそのまま使うことができる。そのままでは使えないエネルギーでも相性があえば、呪文や道具で変換できる。妖怪の使う妖術や念力、EPS、霊能力などはこれに近いものだという。私たちが電車であったという緑髪の女性は、霊能力を魔力に変換していたらしい。やっぱり幽霊の魔法使いだった。
 触媒を使う魔法は使用者に魔力がなくても発動できるもので、教授たちはこれを持ち帰ろうとしたという。触媒になるのはきのこ、植物、宝石など使い捨てのもの、魔力の蓄積ができる道具など種類はあるけど、それを見つける、あるいは作るのがまた大変らしい。箒に乗った魔法使いの女の子はまったく魔力を持っていないにもかかわらず、これらの道具を駆使して力押しの魔法を使ってきたとちゆりは話す。
 教授が出した本――学会が出版許可を出さなかったので同人誌として出したらしい――に書かれていた魔法の種類だ。でもこれだけ調べておいて、 
「魔法の存在を証明するものを持ってくるのを忘れちゃったの」
 ということらしい。その原因がパイプイスだかICBMだかメイドロボだか良く分からない。
「結局学会には復讐できずじまいね……。あ、店員さんスペシャルイチゴパフェルナティックお願い」
 まだ食べる気のようだ。見てるこっちが参りそう。
「証拠を忘れたのならまたとりに行けばいいんじゃないですか?」
「ついでに私たちも連れて行ってくれたら御の字」
「蓮子、図々しいわ。もうちょっとエレガントに頼めないの?」
「秘封倶楽部は実践派オカルトサークルよ。ちょっとぐらい図々しいのがちょうどいいのよ」
 自覚はあるらしい。あえて空気を読まないのね。
「無理ね……」
 と教授。蓮子がすっごく残念そうな表情。そんなに行きたいの?
「夢時空がそのときの航行で壊れて、予算もないから復旧の目処も立たないんだぜ」
 やれやれとちゆりがリアクション。
「それにもう一回同じ世界にいけるとは限らないし……」
 今度は教授が大きなため息。ちょうどパフェが届く。パフェにしては大きいけど。
「そっか……。じゃあさ、メリーの力で幻想郷ってとこに行けないかな?」
「蓮子、私の能力はそんなに便利なものじゃ――」
「ハーンさんは魔術師か何か? 興味あるわ~」
 岡崎教授が興味津々と食いついてきた。ああ、これはいやな予感がするわ。
「メリーは世の中の結界や境界を見ることができるんです。最近はパワーアップしていって、それに触ることができるようになってます」
 なんで私じゃなくて蓮子が説明してるのかしら?というツッコミが入る前に、
「面白そうね、そちらの話も聞かせてもらえるかしら」
「いいですよ。いい話を聞かせてもらいましたし」
 私の許可なしで話が進んでいく。
 ちゆりと目が合い思わず同じリアクション。
 やれやれ。




 ファミレスを出ると今度はコンビニに寄ってお酒をたくさん買った。今晩は教授の好意で研究室に泊めてもらうことになったので流れ的にそのまま晩酌だ。寝るときはソファーで横になると思うけどね。
 そんなわけで大学に戻ってくると、大きな袋いっぱいに入ったチューハイやビールをテーブルの上におろす。岡崎教授も蓮子もたくさん買いすぎだわ。これだけの量を本当に呑めるのかしら。
 早速、教授がイチゴ味の甘そうなカクテルを手に取る。蓮子はビール、ちゆりはリキュール、私はあまり呑む気はないのでカシスオレンジ。全員が缶を手に取ると
「それじゃ、夢時空乗組員と秘封倶楽部の出会いを祝して」
 と乾杯の音頭。乗組員ってあなたとちゆりだけじゃ……。
「かんぱーい」
 成り行きで宴会が始まった。あまり呑むと明日動けなくなると思うんだけど、蓮子はどうやらお構いなしのようだ。それに蓮子って意外とお酒強いのよね。
「で、宇佐見さんの能力は『場所』を知る能力なのよね」
 お酒が入っててもこういうお話はするみたいだ。教授も根っからの研究者ってことかしら。
「時間もそうだぜ」
「時間が分かってても遅刻するからノーカウントなのよ」
 そのくせ結構時間を気にしてるのよね。
「時間も場所よ。四次元目の座標『t』 私たちは三次元の存在だからtを観察したり任意の方向に移動したりはできないけどね。でその1つ上の次元の情報を取得するには月意外にももうひとつ、星って要素が必要なのかもね。あるいは月と星の属性魔法の類か。でも場所が分かるだけというのは魔法のカテゴリに入れていいのか」
 蓮子の能力は魔法とは違うと思うわ。月と星から何かを読み取っている、あるいはGPSから送られてくるデータみたいなのを受信しているか、でも星と地球とでは離れすぎてるから電波を受信するにしても遠すぎるわ。蓮子は瞬時に時間をいえるからタイムラグを説明できない。やっぱり瞬間計算とかそういうの?
「星と月の位置で絶対の座標を割り出してるってことか……できないことはないが、相当な暗算力だな」
 ちゆりもそう思うみたい。季節や時間ごとに星の位置は変わるからそこから計算していると考えられる。月は星と比べて大きく見えるから現在の場所も計算できる。でも蓮子は『場所の名前』を言うのよね。住所も分かるみたいだしちょっとそれは説明できないわ。
「ちゆり、さすがにそれはないわ。そうしたら彼女の視力、相当すごいことになるわよ。むしろそっちが能力だわ」
 確かにそれは言える。さすがに蓮子は3キロ離れた私の目の瞳孔を見たりはできないでしょうし、それなら能力は『千里先まで見通す程度の能力』と『どんな計算式も瞬時に答えを出せる程度の能力』になるわ。それをたとえるなら、
「トンデモ人間万国ビックリショーね」
「「「お前が言うな」」」
 私が発言すると三人に同時にツッコまれた。いつも蓮子にツッコんでばっかりだから新鮮だわ。でも名誉のために言っておくと私にそういうMっ気はないわよ。
「結界ってのは普通見えないの。それは人間には影響や害がないものが多いから。結界の用途のほとんどが妖怪や幽霊を寄せ付けないために張るからね。境界の切れ目ってのは……ちょっと分からないけど」
 確かに私もうまく説明しろと言われても多分無理。
 空間や結界の切れ目、私たちは『スキマ』と呼んでいるわ。そのスキマっていうのは紫色のなんていうのかしら、切り取られた空間に見えるわ。ちょうど何もない空間、あるはずのない場所にぽっかりと穴が開いたような感じ。そのスキマに入ると別の世界にいけたりするの。
 私たちのやっている結界暴きっていうのはこういう活動。私がスキマを見つけて、蓮子がナビをする。それが秘封倶楽部。
 そんなことを、なんでか蓮子の方が分かりやすく解説してた。さすが専属のカウンセラーね。
「人間には害がないから見えない、ってことはメリーって妖怪?」
 こらカウンセラー。患者に向かってそれはないわ。
「私は人間よ。両親からおじいちゃんおばなちゃん、その先も調べて見るといいわ。記録に残ってる限り人間しかいないから」
 以前自分の能力が家系の誰よりも強いことが気になって調べたことがある。実家の古い書物をあさるのは苦労したけど、記録にあるかぎりは私たちの家系に人間を超えた存在はいないことが分かった。記録が嘘だったら分からないけど、そんなところまで調べられないわ。
「確かに霊能力の強い家系であることは認めるわ」
 蓮子の方は分からないけどね。
「人間が妖怪になることだってあるんだぜ。長生きした猫が猫又、化け猫になるようにな」
 動物が妖怪になるのは長生きしたからという理由が多い。今例に出た猫又、化け猫、九尾の狐、因幡の素兎、毘沙門天の使いみたいな妖獣はそうだと思ったわ。
「最近は変わったところはないしまだ人間ね」
 と蓮子。変わってるのはあなただわ。変人的な意味で。
「まだ30も生きてないもの、人間が妖怪になるには200は生きないと」
 今の科学技術なら200は生きられそうな気はする。でも妖怪みたいな強い体を持ってるとは思えない。生命維持装置のチューブがたくさんつながれた寝たきりの妖怪なんてカッコつかないわ。
 蓬莱の薬があれば話は別かもしれないけどね。





「う~ん」
 意識が朦朧とする……。呑みすぎたかしら。
「メリー大丈夫?」
「疲れたのかしら、眠いわ」
 今すぐにでも横になりたい。でもお布団もベッドも用意されてない。地べたで寝るのはエレガントじゃないし、ソファかしら。枕がほしいわ。
「ほら、おいで」
 蓮子に呼ばれるまま蓮子に膝枕してもらう。なんか気持ちいいわ。
「幸せそうな顔ねぇ」
「ちょっとうらやましいぜ」
 そうでしょ~、でも譲らないわよ。蓮子の膝は私の特等席なの。
「明日は江ノ島行くんだっけ?」
「はい」
「私は明日に備えてるわ~。蓮子も呑み過ぎないように~」
「はいはい、分かったよメリー」
 と蓮子が飼い猫にするみたいに、頭をなでなでしてくれる。私は蓮子の飼い猫じゃないけど、気持ちいいからいいわ。その気持ちよさと微睡に身を任せてまぶたを閉じる。
「だったら気をつけたほうがいいぜ。江ノ島の神様に」
「神様?」
 私も聞いたことないわ。どこにでも神様っているものなのね。日本は八百の神様がいるって言われてるし、偶像崇拝でも神様として信仰すれば神様になったりするって言うし、不思議な国よね。
「カップルで江ノ島に行くと破局するってジンクス。江ノ島の神様が嫉妬して別れさせてしまうらしいの」
 あらあらそれはこわいわ。
「その割には海水浴できる海、龍恋の鐘みたいなデートスポットもあるんだぜ」
 それは楽しみだわ。蓮子も覚えててね。私はこの記憶が明日まで残ってるか分からないから~。
「お二人はいかないんですか?」
「私はいつでも行きたいんだけど、ご主人様は忙しいからな」
「地元だしいつでも行けるじゃない、あとご主人様じゃなくて『夢美』って呼びなさい」
「そういって2年以上たってるぜ。あと癖はなかなか抜けないんだぜ」
「あなた、私のなんなの?」
 質問の答えを考えているのか、すぐに返事が聞こえない。
「……大切な人だぜ」
「も~、ちゆりったら」
 ポカッとちゆりが叩かれた音がした。
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